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2004年05月18日

メトロポリス

1927年公開のドイツ映画、メトロポリス(監督:フリッツ・ラング)を観ました。SF映画の古典的名作で、チャップリンのモダンタイムス(1936年)より10年早い作品です。オリジナルは3時間あったのですが、製作会社がこの映画のコストを回収できずに倒産し、フィルムを買い取ったパラマウントが2時間30分版をオリジナルとして売り出した時に3時間版を破棄したためにオリジナルコピーは現存していません。

白黒の無声映画で、BGMは後からかぶせたものだと思われます。舞台は製作当時から数えて100年後、つまり2026年です。今から思えばそんなに未来でもありませんね。街の支配者の息子はある日、労働者の娘マリアと恋に落ち、それまで知らなかった労働者たちの実態を目のあたりにして愕然とします。彼の父はマリアを幽閉し科学者に彼女そっくりの人造人間を作らせて二人の仲を裂こうとするが…というお話です。ストーリーの最後の方は初めの問題提起に比べてかなり安易な気がしますが、この映画の何が素晴らしいって、メトロポリスの描写がすごいです。あと、人造人間の美しいこと!マリアと人造人間の2役を演じたブリギッテ・ヘルムの演技も見所です。

この映画より少し前に、ヨーロッパ芸術界をアールヌーヴォーが席巻します。アールヌーヴォーは多分にジャポニズムと呼ばれる日本美術に影響を受けており、その流行はこの映画の製作時も衰えていなかったようで、提灯が小道具に使われていたり享楽の街の名が吉原だったりして面白いです。

政治的にもちょうどドイツは激動の真っ只中にある時代です。この頃のドイツは第一次世界大戦に負けたばかりで、この映画の観客の一人は当時まだただの人だったヒトラーです。メトロポリスにいたく感激したヒトラーは、政権取得後、ラング監督(ユダヤ人)に特別待遇を条件にナチ礼賛映画の製作を依頼します。監督は結局アメリカに亡命しますが、メトロポリスの脚本を手掛けた彼の妻は離婚してドイツに残り、メトロポリスに出演した別の俳優と共にナチ党員として宣伝映画を作り続けることになります。

誤解を恐れずに言えば、ヒトラーが感動したのはメトロポリスの技術もさることながら、全編を通して描かれるヒューマニズムにあったのではないかと思われます。当時のドイツは敗戦からくる閉塞感にあえいでおり、ナチはちょうどこの映画の労働者のように弱い立場にあったドイツの人々を守ろうとする義憤を活力としたものだったからです。実際、ヒトラーは労働を何より尊く美しいとして推奨しました。それが行きすぎた民族主義となりついにはホロコーストを引き起こしたところまでは肯定しませんが、狂気の独裁政権と言われるものの当時は数多くの信奉者がいた(今もいますが)わけで、それには必ず何か理由があるはずなのです。

…話がだいぶずれました。当時の社会状況なども絡めて映画を観た後にいろんな話ができるのが、古典の楽しいところです。

私事としては、論文を出してやや身軽になったところです。指導教官にも「書きすぎー」と笑われるほど、ちょっと書きすぎました。もう自分で自分の論文を読み返すのも面倒くさいくらいです。審査員の先生方、御迷惑をおかけします。

投稿者 akiko : 2004年05月18日 00:45

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