こんにちは、カサギです。
長かった冬休みももうすぐお終いです。来週の頭からは、いよいよ留学生活最後の学期がはじまります。
と言っても、先の学期までにキツイ授業はすべて終わらせているので、今学期こそは人間(学生)らしい生活ができるのではないか……と思っているのですが、はやくもSpringShowに向けてのプロジェクトに暗雲が…(冷汗)
そう、春学期の終わりには恒例のSpringShowがあります。
前回 SpringShow 2012 は Matte Painting と Dynamics&Particle に応募して、Matte Painting の方は惜しくも入賞できませんでしたが、Dynamics&Particle の方はみごと Winner に輝く事ができました。(詳しくはこちらの記事を見てください)
自分の密かなる野望としては、前回同じ日本人のRyoが達成した2つの部門での入賞を超える、3部門での入賞を狙いたいと思います。
ターゲットとしては、まずは絶対外せない Dynamics&Particle での2年連続優勝と、Rigging&Scripting 部門での入賞(実はもうすでにScript(プログラム)は完成していて、後はデモムービーを作るだけだったりします)、そして、前回より引き続きお伝えしている Matchmoving 部門での入賞ですね。
残り4カ月、前人未到の3連覇に向けて、静かなスタートを切りたいと思います。
そう言えば、以前紹介した FallShow で公開となった「Glass Butterfly Project」のトレーラーがVimeoで公開になっていました。(例によってまったく連絡なし(苦笑))
本番まで全く知らされていなかった、自分の「作業報告動画(あえて自分のショットとは言いたくない…)」が何点か使われています。
Shots-In-Progress: Glass Butterfly – Chapter I from Jennifer Phang on Vimeo.
00:13 からの塗装が徐々に飛び散るショットと、蝶の羽から煙のようなものが発生するショットがそれです。
冬休みの間、特に遊びにも行かず黙々と作業していたので(涙)、実はこのプロジェクトに関してはかなりの進展がありました。
…と言っても、NDA, Non-Disclosure Agreement (プロジェクトの内容を外部に見せてはいけないという契約)があるため、自分のプロジェクトや課題と違って、おいそれと公開できないのが残念です。
結構カッコいいショットが出来たので、発表になり次第こちらのブログで紹介したいと思います。
そう言えば、このショットってSpringShow2013 に応募できるんでしょうか?NDAがあるから無理なのかな?
さて話は変わって、今回は前回に引き続き ANM 352 Matchmoving の紹介をしたいと思います。
前回の記事で Matchmoving の基本的な流れと仕組みがお分かり頂けたかと思いますので、今回は応用編と言う事で、Matchmoving のあるあるトラブルを紹介したいと思います。
前回のお話でもご説明した通り、Matchmoving は動画内の特定のポイント(マーカー)を追随(トラッキング)することで、その移動距離からカメラの位置・回転を逆算する方法と解説しました。
…と言う事は、マーカーさえトラッキングしてしまえば後は、勝手にソフトが処理してくれるから楽勝では?と思いがちです。
(実際、やるまでは自分でもそう思っていました。)
ところが、実際クラスを取って課題をやって行くと、このトラッキングがもの凄く困難なショットに出くわす事が多いのです。
前回のおさらい。
前回の最後に紹介した、「トラッキングマーカーが少ない」もしくは「そもそも存在しない」ショットと言うのは、このショットで言うと「壁の染み」を使うなど、意外とマーカー以外にも利用できる物は多いので簡単な分類に入ります。
そう言えば、言い忘れていたことに、トラッキングに使ってはいけないポイントがあります。
それは「Tジャンクション」と「動いている物体」です。
前者はその名の通り、何かが前後に重なっている点です。コントラストが強い場合が多いので、マーカーとして利用しやすいのですが、前後の距離が違うと言う事は、そこをトラッキングしてしまうとカメラの計算に狂いが生じてしまいます。
後者は、お分かりの通り、そもそも動いている物体からでは、カメラの位置は逆算できません(カメラ固定の場合は除く)。
ただ、動いている物体からはカメラは逆算できませんが、逆にカメラが固定されていれば、「オブジェクトトラッキング」と言う技術によってオブジェクトの軌跡を復元することもできます。
トラッキングが難しいショットその1 「Lens Distortion (レンズディストーション)」
おそらく今回ANM 352 を取ったすべての生徒がまずつまずいた問題、それがレンズディストーションです。
レンズディストーションについてはこちらを参照してもらうと分かりやすいと思います。
http://www.dxo.com/jp/photo/dxo_optics_pro/features/optics_geometry_corrections/distortion
簡単に言ってしまえば、動画の端(カメラの端)の画像は多かれ少なかれ歪んでしまうと言う事です。
もちろん、映画撮影に使われるレンズは非常に歪みの少ないものが使用されるので、この歪みも少ないのですが、それは予算のある大きな映画プロジェクトの話で、低予算の映画もしくはPVなどの撮影の場合、そもそもビデオカメラではなく、最近は普通の一眼カメラの動画機能が使われる事もすくなくありません。
今回の課題で渡されたショットは、どう見てもその辺に売っているコンデジで撮った歪みのひどいものでした。
コントラストが大きいポイントが多いので、トラッキング自体は簡単なのですが、もちろんそのままトラッキングすると、カメラの位置がもの凄くずれます。
なので動画でもお分かりの通り、トラッキング前に動画自体のレンズディストーションを修正してからトラッキングに入ります。画面の端が内側に湾曲しているのはそのためです。
トラッキングが難しいショットその2 「Motion Blur (モーションブラー)」
要は手ぶれです。
そして手ぶれが起こると、せっかくそれまでトラッキングしてきたマーカーの形が変わってしまい、ソフトがマーカーを見失ってしまいます。一応、ソフトの方でThreshold値を調整すればトラッキングを続けることもできるのですが、その際に他の場所をトラッキングポイントの勘違いしてしまったり、そもそもトラッキングが続かないケースもあります。
この場合はしょうがないので、モーションブラーの少ないフレームをトラッキングして、その間を埋めるように、後は1コマ1コマ手動でトラッキングしていくしかありません。
このショットの場合、手ぶれに加えてレンズに水滴が付いているため、せっかくトラッキングしてきたマーカーが途中から水滴に隠れて使い物にならなくなると言った事が多発しました。
トラッキングが難しいショットその3 「オブジェクトトラッキング」
さきほど軽く説明しましたが、マッチムービングは何もカメラを復元するだけの作業ではありません。
実は動画の中を動く物体の動きを再現する事もできます。
原理は前回説明したカメラから見た固定点間の差異を利用するのと同じで、今度はカメラを固定し、物体上の複数点の差異から物体の面の移動・回転を復元します。
この時、ひとつの塊上の点達は、その距離間が変わらない事が条件となります。
例えば、手をトラッキングする場合、指は関節までを1つ固形物として扱い、指先と関節までの間のマーカーでオブジェクトトラッキングをします。
ちょっと言葉で説明すると難しいので、まずは簡単なオブジェクトトラッキングから
この場合、ちょっとトラッキングのずれが激しいですが、ルービックキューブの各面上の点をひとつの塊として扱い、面の移動・回転を再現しています。
また、オブジェクトトラッキングには、最近はもう当たり前になってしまった、フェイシャルトラッキングも含まれます。授業でフェイシャルトラッキングは扱わなかったので、参考程度に紹介するだけにしたいと思います。
さて、いかがだったでしょうか。
Matchmoving は Rotoscoping と並んで、VFX(Compositor)には不人気……と言うか、目だたなくて地味な仕事なのでよくジュニアアーティスト(新入り)に任される仕事だったりします(笑)
とはいえマッチムービングがしっかりしていないと、その後どんなに素晴らしいCGショットを作っても、「背景とマッチしていない」何とも情けないショットが出来てしまうので、侮るなかれ、結構重要な仕事なのです。
…地味で大変ですがw
それでは、また。
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